同記事は日本市場で7/11-20に資金調達を実施した日本企業を抜粋、新規性、技術性、収益性、社会貢献性の4視点より、独自の評価基準を元に分析していく。
7/11~7/17の資金調達案件 紹介順
7/11 ピーステックラボ レンタルシェア 3.5億円
7/12 空(そら) SaaS ホテル特化 1.7億円
Paidy FinTech 60億円
ハカルス AI 1.7億円
7/17 Next Branders EC 5000万円
TECHFUND ブロックチェーン 1.2億円
BONX ウェアラブル会話デバイス 4.5億円
ピーステックラボ
7/11、3.5億(円) 新規性(A) テクノロジー(B) 収益性(B) 社会貢献度(B)
領域:レンタルシェア
投資家:リコーリースとアスクルを引受先とした第三者割当増資
サービス:CtoCシェアリングプラットフォーム
解決する課題:プレミアムなものを購入に試したい。捨てられないが使ってないものがある。
参考:https://jp.techcrunch.com/2018/07/11/alice-style-fundraising-350-m-yen/
概要:ピーステックラボが現在開発をしている「Alice.style(アリススタイル)」は、生活家電を、個人対個人、企業対個人の「レンタル」でシェアするアプリ。生活家電以外にも、美容家電やマタニティーウェア、グッズ、ベビー用品などが対象商品として想定されている。
評価 :家のシェアリングサービスのAirbnbや車のシェアリングサービスのAnycaのように、同社のサービスは、シェアリングサービスが家電やその他の生活用品に水平展開したものだ。現代はものが溢れるようになり「所有」への価値の希薄化を背景に、シェアリングが流行っている。特別な体験を、「所有」せずに体験したいという欲があるのだ。高級な家電などはこの欲に当てはまるが,家電は移動に対してコストがかかるため,必然的にシェアされるものは使っていない家電や生活用品に限られる。
空(そら)
7/12, 1.7億(円) 新規性(A) テクノロジー(B) 収益性(B) 社会貢献度(B)
領域: SaaS ホテル特化
投資家:ベンチャーユナイテッド、ふくおかフィナンシャルグループのVCであるFFGベンチャービジネスパートナーズ、エースタート、マネックスベンチャーズ、ほか数名のエンジェル投資家
サービス:ホテルの部屋料金自動化ツール
解決する課題:周囲のホテルの情報は共有協定しないと得られないゆえに目隠しで経営しているところが多い。
参考:https://jp.techcrunch.com/2018/07/12/sora-fundraising-170-m-yen/
概要:空の提供サービスは、ホテルや旅館などに自動で最適な宿泊料金を提示するBtoBサービス「MagicPrice」とホテルの経営分析サービス「ホテル番付」の2つである。「MagicPrice」はホテルが持つ過去の宿泊予約データと、公開されている旅行予約サイトなどから得たデータを分析し、適正な宿泊料金を提案することで、予約サイトの自動連携を可能にしている。「ホテル番付」はTechCrunch Tokyo 2017のスタートアップバトルで最優秀賞を獲得。周辺ホテルの客室価格や販売室数を瞬時に分析し、経営判断をサジェストする。2018年4月現在、ホテル番付とMagicPriceを合わせた利用ホテル数は1500件。今回の調達資金は、サービス拡大に充てられる。
評価:ホテルの市場規模は1100億円。このサービスによって、ホテルが経営以外のサービスに対して集中できるようになり、よりサービスが行き届くと考えられる。Techcrunchの2017年の同サービスのプレゼンテーションで面白かったのは、マーケットの4Pの話だ。マーケットの基本の4P(Promotion, Place, Product, Price)のうち、Priceで世界に大きなインパクトを与えている会社はいまだにないという。PromotionがGoogle, PlaceがAmazon, ProductがApple。ではPriceの最適解を提供する会社はどこになるのか?空かもしれない。
Paidy
7/12、60億(円)
新規性(A) テクノロジー(A) 収益性(C) 社会貢献度(C)
領域:FinTech
投資家:伊藤忠商事やゴールドマン・サックスらを引受先とする第三者割当増資
サービス:クレジットカードを使わない決済サービス
解決する課題:クレジットカードの情報流出の恐怖、事前登録、代引きの面倒さなく、電話番号とメアドで決済。
参考:https://jp.techcrunch.com/2018/07/12/paidy-fundraising/
概要:事前の会員登録が不要で、「メールアドレス」と「携帯電話番号」の入力だけでオンライン決済ができるサービス。2018年6月末の時点でアカウント数は140万口座。加盟店ネットワークは約70万サイト。
評価 :日本のクレジットカード決済の現状から同サービスのビジネスの可能性を探ってみる。日本のクレジットカードの年間決済額は49兆円で消費の17%だという。年々増加傾向にあるが世界と比べるとかなり低い(アメリカ54% , 韓国58%)。クレジット決済以外の市場はかなり大きそうだ。一方で、使用したことがある人は84.9%を超える(2016年の三菱総合研究所調べ)。ではなぜ使わないのか?クレジットカードを最も利用しない主婦層に対して、のアンケート結果より、「1位 利用の場面がない(31%)」「2位 セキュリティへの不安(29%)」が挙げられる。同サービスは、メールアドレスと電話番号を入力することで、SMS通信で暗証番号が送られるため、数字と暗唱番号が盗まれたら不正利用されるクレジットカードとは異なり、スマホが盗まれない限りは安全が担保される。ただ、そのトレードオフとして、決済の手軽さが失われる懸念がある。
ハカルス
7/12、1.7億(円)
新規性(A) テクノロジー(A) 収益性(A) 社会貢献度(A)
領域:AI
投資家:エッセンシャルファーマ、大原薬品工業、キャピタルメディカ・ベンチャーズ、みやこキャピタル、メディフューチャー
サービス:少量のデータからでも傾向や特徴を抽出できる「スパースモデリング」技術の開発
解決する課題:機械学習には大量のデータが必要
参考:https://jp.techcrunch.com/2018/07/12/hacarus-fundraising/
概要:ハルカスは、少量のデータからでも傾向や特徴を抽出できる「スパースモデリング」技術を機械学習に応用した、独自AIを開発している。ハカルスではこれまでに、同社の技術を産業や医療分野に展開。例えば、ドローンで空撮した建物の画像から補修が必要な箇所を特定するようなシーンでの利用実績がある。
評価 :機械学習において、学習に多くのデータが必要なことは、サービスのネックになりうる。例えば、ヘルスケア系サービスなどは、ユーザーからの精密なデータ取得が必要であり、ユーザーによるデータ入力負荷が最大の課題があった。その課題を解決する技術が、少ない・欠損したデータでも十分に分析可能な技術が「スパースモデリング」だ。具体例としては、脳血管画像の例では80%データが欠損していても血管画像が再構成が可能だという。プラットフォームとしてビジネスを展開していけば十分に世界をとれる。
Next Branders
7/17、5000万(円)
新規性(A) テクノロジー(B) 収益性(B) 社会貢献度(A)
領域:EC
投資家:ANRI、個人投資家の有安伸宏氏、ヘイ株式会社代表取締役社長の佐藤裕介氏
サービス:寝具に特化したD2CのECサイト。
解決する課題:肌へのストレスを徹底的に排除した最高峰の心地良い製品を安く提供したい。
参考:https://jp.techcrunch.com/2018/07/17/foo-tokyo-fundraising/
概要:「Next Branders」はパジャマやナイトウェアなどリラックスタイムに使用する商品を扱うD2C(Direct to Consumer)ブランド「Foo Tokyo(フー トウキョウ)」をリリースした。製造時には工場の空き時間を活用するため、コストを大幅にカットできる。100万円程度で売られるものを、数十万円で提供できる。
評価 :2016年 寝具新聞社の調査によると、現在の睡眠グッズマーケットの市場規模は1兆2359億円である。特に日本においては睡眠に対する不満が多く、ビジネスとして、爆発する可能性が高い。これは睡眠アプリのダウンロード数を見ればわかる。課題としては、ECサイトでは生地など、グッズの良さがわからない。そういった面を踏まえたブランディングやUIの設計が大事になってくる。
TECHFUND
7/17、1.2億(円)
新規性(A) テクノロジー(A) 収益性(A) 社会貢献度(A)
領域:ブロックチェーン
投資家:野村ホールディングスのコーポレート・ベンチャーキャピタルファンド、ユナイテッド、インフォテリア、西川潔氏、竹内秀行氏、そのほか数名の個人投資家および、西武信用金庫と日本政策金融公庫。
サービス:ブロックチェーン・アプリケーションの提供
解決する課題:ブロックチェーンの実装難易度や学習コストが高い
参考:https://jp.techcrunch.com/2018/07/17/techfund-fund-raising/
概要:同社が提供するサービスは「ACCEL BaaS」。これは、ブロックチェーンの実装を容易にする。具体的には、頻繁に使われるスマートコントラクトをテンプレート化し、さらに設定をGUI化することで、Solidityなどのプロトコル固有の開発言語を習熟せずに、ブロックチェーンの仕組みを使うことができる。また、各種ブロックチェーンのプロトコル間で互換性を担保している。つまりどの仮想通貨場で、アプリケーションを動かすか、そのスイッチングが即座にできる。
評価 :ブロックチェーン関連の市場は莫大である。特に、次世代のアプリケーションの必須技術にもなりうる。しかし,実装難易度が高く,現状学習コストもかかる.ITサービスをリリースする際に,サーバが必要な時にオンプレミスではなくAWSなどのクラウドサービスが使われるように,同サービスにも需要があり、プラットフォームビジネスとして伸び得る。ここで大事になってくるのがタイミングである。タイミングはどうか。ブロックチェーン技術はまだまだインフラとしても完成していない一方で、日本ではブロックチェーンを使ったアプリケーションを開発する学生も散見されはじめる(例:PoliPoli)ほどアプリ開発も盛んである。新技術の新興サイクルを示したハイプ・サイクルをみるに、ブロックチェーン技術はいまだ黎明期にあると言われている。少し早すぎるような気もするが、種まきという視点で見ればいいタイミングだ。
BONX
7/17、4.5億(円)
新規性(B) テクノロジー(A) 収益性(B) 社会貢献度(B)
領域:ウェアラブル会話デバイス
投資家:リコーとの資本提携
サービス:ウェアラブル会話デバイス開発
解決する課題:遊びながら会話がしたい
参考:https://jp.techcrunch.com/2018/07/17/bonx-ricoh/
概要:「BONX」は「スノーボード中に仲間と話したい」という思いから生まれたプロダクトである。片耳に装着する専用デバイス「BONX Grip」を用いて、友達と会話を楽しみながら遊べるグッズだ。スマホとBluetoothを接続しておけば、携帯電波の入るところであれば、遠距離や悪天候でも相手と会話ができる。機械学習により周囲の騒音環境に合わせて音声を自動的に最適化する発話検知機能と人の声だけを高精度で検知できる。
評価 :Bluetoothを利用したウエアラブルデバイスはすでに数多くあるが、「BONX」は運動や遊びに特化したデバイスのようだ。遊びに特化しているため、周囲の音も聞き取れる安全設計に特化している。また、その他競合との技術的な特異点が多くあり、「再接続」や「良質な音」、「最小のデータ通信量」など盛りだくさんだ。非常にオシャレで、「アメリカで流行っている」、「インフルエンサーが使っている」という情報だけで、流行りそうである。スポーツの楽しみ方がこのデバイスでアップデートするかもしれない。
まとめ
時価総額が最大級のアップル、グーグル、フェイスブック、アマゾン、テンセント、アリババは、どこもプラットフォーム・ビジネスを展開している。今回の調達案件では「ハカルス」「ピーステックラボ」「TECHFUND」などプラットフォーマーとしての潜在性のあるビジネスが多く、非常に期待が持てる。
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世界の小川。早稲田大学大学院 機械工学系。世界市場の動向をウォッチするのが趣味。特技はチャリ爆走。
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