テスラやグーグルを敵に回すジョン・ホッツの素顔

テスラやグーグルを敵に回すジョン・ホッツの素顔

前回の記事にて伝説的ハッカー、ジョン・ホッツのcomma.aiがTeslaのシニア・エンジニアを迎えいれ、邁進していることをお伝えした。非凡な頭脳と功績を持つ彼は、何かと謎が多い。今回は、そんなホッツの素顔に迫る。

複雑なテクノロジーでも捻じ曲げることができることを証明しようとする、パズルオタクのような人。

ホッツはニュージャージー州で育ち、彼の父はカトリック系の高校にてテクノロジーを教授し、母はセラピストである。14歳にしてIntel International Science & Engineering Fair にて空間の寸法を測量するロボットを造り、ファイナリストとなった。2年後にはNeuropilotと呼ばれる思考によりコントロールできるロボットを産み出した。

2007年、17歳になったホッツは世界初の iPhone の脱獄に成功し伝説的ハッカーとして、一躍世界的有名人となった。その3年後には、SonyのPlayStation 3 を再び世界で初めてハッキングし、Sonyから訴訟される事態となった。ホッツが今後 Sony 商品に干渉しないことに同意し、事件は納まった。「僕は道徳に従って生きてる。法律には従わない。法律はろくでもない人たちによって作られたものだから。」

アシュリー・バンスは彼をこう表現する。「ホッツは、商業的なシステムに侵入して金銭的な利益を追うハッカーではないよ。彼は、もっと自分の意思によって複雑なテクノロジーでも捻じ曲げることができることを証明しようとする、パズルオタクのような人だよ。」 

どの仕事にも大学にも不満足で、失望した。

彼は Google で 5ヶ月間インターンとして働き、SpaceX では4ヶ月間、Facebook では 8ヶ月間勤めた。どんな仕事を任されても、ホッツは満足せず、失望した。Google で彼が出会った抜群に優秀なデベロッパーは、バグ処理など、ありふれたタスクしか任されていなかった。Facebook では一流のコーダー達が、ユーザーの広告クリック率を向上させることに骨を折っていた。

2012年の秋、ホッツは新しい分野に挑戦することを決心した。ーAIだ。そこで、カーネギーメロン大学で Ph.D.を取得するべく入学を決意。AIに関する全ての研究書類を読破しながら、余暇を楽しむ時間があった。「2学期間通って最も難しいクラスで4.0を取ったよ」と彼は言う。そんなホッツは大学院で目撃した光景に、またも絶望した。「いつか Google で少し高い給料をもらえるようにと、悲惨にもすり減っていく大学院生がたくさんいたんだ。大学が陥ってしまった状況を見て僕はショックだった。僕が最も秀才だと思った人たちは高校にいたんだ。だから、大学の人々には心底失望したよ。」

しかし、そんな憂鬱な大学院生活がきっかけでホッツはシリコンバレーへと帰還した。最前線のAI資料を貪り読み、急成長していたAIスタートアップ Vicarious での仕事を引き受けた。「最先端の論文を理解した。数学はとってもシンプルなものなんだ。僕の人生で初めて、『知るべきことは全て知り尽くした』と思えるようになったんだ。」

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イーロン・マスクとの出会い

Vicarious を退職後、共通の友人を通して Tesla のCEOであるイーロン・マスクと出会った。フレモントにある Tesla の工場にて彼らは対面し、AI テクノロジーの強みと危険について話し込み、ホッツが Tesla の自動運転技術の開発に協力するという話が持ち上がった。それまで Tesla に先進運転システムの車載キットを提供していた Mobileye より優れたものをホッツが提供できれば、マスクがホッツにとって有益な契約にサインするという提案があった。しかし、ホックはマスクが期間を度々変更していると感じたため、この提案を破棄。マスクは 「正直、Teslaで働くべきだと思うよ。Mobileyeを上回れば、すぐにでも長い時間軸で数百万ドルのボーナスを喜んで用意するよ。」とのメールを送った。ホッツはこう返答した。「そのオファーには感謝するよ。でも前にも言ったように、僕は仕事は探していないんだ。Mobileyeをクラッシュしたらピンするよ。」 マスクは 「OK」 とだけ応えた。

 

同社はアンドリーセン・ホロウィッツが主導した投資ラウンドで310万ドルを調達した。もちろん、この額は自動運転企業において開発を充分に潤す額とは程遠い。しかし、この投資の結果、現在の同社の企業価値は2,310万ドルに達した。

ホッツは General Motors がクルーズオートメーションを買収した10億ドルもの金額が、自身の会社の買収の基準額になるのでは、とメディアに語った。

自動運転車市場は今後もさらに拡大していくことは明白だが、Comma.aiが同市場において、革命的なテクノロジーを生み出すことが出来るのか、必見である。

【参考記事】