IoT領域に強いベンチャーキャピタル

IoT領域に強いベンチャーキャピタル

製造、流通、農業などへの応用に期待がかかるIoT系スタートアップは、今まさに資金を集めている分野と言える。2016年はVC業界全体として投資額が落ち込んだ年だったが、その中でも勢いを落とさずに投資を受けられたのは、収益化までの可能性が高いからであろう。2016年時点で、IoT分野への投資数ランキングのトップ12のうち5つがCVCという状況であり、事業シナジーの高い企業のCVCが積極的に投資を行なっているのが現状である。同章では同領域で最も活発に投資を行い、また実績をだしているファンドを紹介する。

・Intel Capital

IntelのCVCである。自社と関連するTech系スタートアップへの投資が多く、その中でもIoT分野には特に注目している。IoTでは40以上のスタートアップに投資するほど好調で、ファンド金額も安定している。

・GE Ventures

アメリカ大手電気機器・機械メーカーのGEが手掛けるCVCである。自社とのシナジーを見込んでIoT分野に多く投資していることが分かる。3Dプリンターの「Desktop Metal」などへ投資した実績がある。投資活動の好調を受け、ファンド金額も増加傾向にある。

 ・ANDREESSEN HOROWITS

収益の見込める安定したスタートアップに投資している比較的新しいVCである。2015年後半に他のVC同様、ファンド金額を落としたが、レイターステージへの投資を増加させるなどして現在は以前の水準に戻してきている。

・Quallcomm Ventures

アメリカの通信・半導体事業大手のQualcommが手掛けるCVCである。Qualcomm本社が力を入れ始めたことで、ファンド金額も増加している。投資先は自社と関連するスタートアップが中心である。

・NEA

多くの分野でランキング入りを果たす大手のVCである。Exitが総じて好調で、ファンド金額も順当に増加させてきたが、近年の業界の動向の影響を受け、この2年は特に増加せずそれまでの水準を保っている。IoT分野に20以上の投資先を持ち、ユニコーン企業である「Uptake Technologies」に投資している。

・Khosla Ventures

小額投資が多かったVCだが、2016年に引き続き、2017年も大規模な投資を行っている。ファンド金額は業界の動向を受け、多少の増減はあるが、現在も高い水準をキープしている。

・Foundry Group

アーリーステージのITスタートアップをターゲットにしたVCである。ここ2年ほど投資件数が減少しており、ファンド金額も減っている。近年はIoT分野に力を入れて投資している。

・KPCB

1972年創業の歴史あるVCである。その規模ゆえに近年はVC業界低迷の影響を受け、ファンド金額も減少している。IoT分野は市場も成熟しつつあるため、積極的に投資していくと考えられる。

・True Ventures

シードステージを中心とした、かなり早い段階での投資を行っているVCである。ファンド金額は2015年のVC業界の冷え込みで一時下落したが、従来から力を入れていたHRtechなどへの投資が伸び、現在は増加している。IoT分野では16の投資先を持つ。

・Founders club

VCのオンラインプラットフォームを手掛けており、クラウドファンディングの形で資金を調達するのが特徴である。Exitが好調で、ファンド金額も順調に伸ばしており、15のIoT系企業に投資している。

日米市場の比較

・米国に比べ日本は大手メーカーのCVCが少ない

米国がIntel, Google Ventures等の大手企業がCVCとなり積極投資を行うことで、スタートアップにとっては資金的サポート、技術的サポート、また売却先として検討することができるため、密な連携を持つことができる。一方で日本の大手メーカー企業は自己主義であり、自らサービスの開発、提供を行いがちである。近年日本でもオープンイノベーションというワードが浸透しているが、経営層が真のオープンイノベーションの可能性を信じ、企業としてオープンイノベーションを取り組む企業は数少ないだろう。

・米国に比べ日本はIoTスタートアップの資金調達が困難

人類の発展への貢献のため投資を実施する米国の投資家に比べ、日本の投資家は儲かるビジネスに投資を行いがちである。IoT技術は日本の投資家からすると、技術への理解ができないため、投資困難となりがちで、投資を見送る傾向にある。筆者は本年度、シリコンバレーのIoT企業(時価総額100M程度)に対し、日本進出のサポートを行い、日本での資金調達を試みたが、日本の投資家が見送りを連発、筆者が同社社長に無理言って日本の投資家から1M調達できる機会を与えてくれと懇願したはいいものの、そこに投資できる日本の投資家はなかなか見つからなかった。シリコンバレーのユニコーン企業が調達に困るわけもなく、日本の投資家から調達は厳しいと感じた同社社長はその後、1週間で残りの1Mの調達を実施した。

・傍観はするが、挑戦はしない

ラスベガスに年に一度開催されるCESに参加すると、日本企業のタグをぶら下げた、日本企業の軍勢が一際目立つ。情報収集のために訪問する日本人の総数は毎年増加しており、どこのコーナーに行っても日本語が飛び交っている。一方で、日系企業が出展し、世界の企業と肩を並べて、自社サービスを紹介する光景は数少ない。日系企業は情報収集にとどまり、自社サービスを世界で販売するのではなく、世界のサービスを日本に持ち込むためにラスベガスに訪問するのである。これはラスベガスのCESにのみ当てはまることではなく、techcrunch disrupt, finovate等その他世界的カンファレンスでも同じ光景が拝見できる。

日系企業が取り組むべきこと

上記の通り、日本企業が今後世界のIoT領域における主導権を握るのは困難である。IoT領域における投資を実施するVC, CVCの総数、ベンチャー企業に集まる金額規模の違い、官民連携の遅さ等が日本のIoT領域企業の国外展開を苦悩する原因となる。しかし、日本の強みを活かした下記条件をクリアすることができれば、日本企業の世界展開、及び世界市場での参入が可能であると筆者は考える。

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