アメリカで伝説を作った日本人起業家 小川氏の語る ”シリコンバレーは失敗を歓迎する場所”

アメリカで伝説を作った日本人起業家 小川氏の語る ”シリコンバレーは失敗を歓迎する場所”

今回はコンテナリース事業を展開するCAI International, Inc.を創設した小川弘光氏にインタビューに伺った。小川氏のこれまで歩んできた道のりと、それから培ってきたビジネスインサイトや、サンフランシスコに本部を拠点するCAI International, Inc. の成功の秘訣についてお話しいただいた。

小川氏は、小学校の頃に世界を舞台にして仕事をすることを志していたようだ。兄が英語を使って外国人と話している光景を目にし、海外に対する憧れが強くなっていった。高校時には外交官になることも考えたが、当時新しく展開されたビジネスアドミニストレーションに専攻を決意。ワシントン大学院に進学した。

MBAを取得する過程で、教授からの勧めもありチャールズ・ファイザー&カンパニー・インク(ファイザー株式会社)に務める。2年間セールスマンとして医療薬を販売した後、経理部に移動。その後、コカコーラに転勤し、ファンタの販売促進を担当した。30代という異例の早さで販売促進部長に上り詰め、約270億円の予算を管理した。その後の4年間はヒューブラインに勤務し、ヒューブラインジャパン設立から約3年で黒字まで引き上げた 。『ヒューブラインで得た経験からアントレプレナーとしてのノウハウを叩き込み、後の企業にあたっての自信にも繋がりましたね。』と小川氏は言う。その後、Itel Containerでの経験を経て、1989年に当時新鮮なコンセプトであったコンテナリース事業をCAI International, Inc.の名の下発足した。『他のビジネスは景気によりマーケットの変動が大きいですが、ファイナンシャルビジネスという、時間が経つほど顧客との信頼関係が深まるコンセプトに興味が湧きました。』

CAI International, Inc.はサンフランシスコに本部を置き、現在は東京、香港、台北、シンガポール、アントワープ、ロンドン、ハンブルグなど主要港に、支店および子会社を有している 。小川氏が幼少から思い描いていたように、世界を舞台に事業を開設したのには理由があった。『日本国内に比べ、海外だと、規制規約が極めて少ないように思えました。特に日本は銀行から資金を調達するのも一苦労。担保掛目が最大50%だと言われ、日本でコンテナリースを始めるのはとても難しいと思いました。その分、アメリカはアイディアがあれば、比較的お金の借り入れがしやすかったですね。また、サンフランシスコはリース事業が浸透していて、良い人材も揃っていました。まさにコンテナリース事業において条件が最良な地でした。』

国内での金融規制の厳しさを語った小川氏は日本と米国シリコンバレーの視点の違いについて、こう話した。『シリコンバレーは極めて規制規約がない場所です。例えば一度事業に失敗すると日本では金融業界から信頼を直ちに失ってしまう。ですが、シリコンバレーは失敗を歓迎する場所です。失敗から学んだ経験を生かし、より良い商品・サービスを提供できるようにサポートを得ることができるのです。』そんな失敗の捉え方の違いが、小川氏の言う日本人が海外に目を向けるべき最大の理由だそうだ。

CAI International, Inc.は2013年に米フォーチュン誌に“世界の急成長中企業100社”の一つにも選ばれ、全世界コンテナ市場の6.8%を有する規模にまで拡大した 。そんな多大な土台を築き上げた小川氏の、仕事におけるモットーとは。『私はどんな時も“フェアプレイ”を心に留めてお仕事をしてきました。成果を独り占めせず、素晴らしいお仕事をしてくれたパートナーには分相応のお礼をしたいと思っていますし、低質なお仕事にはそれなりの対価があると思います。相手をフェアに認める、ということが、周りの人々に認めていただいた最大の点だと思います。』

近年、日本人留学生の数が年々減少し、大学の価値が見直される中、経営者として、小川氏は大学・大学院の卒業資格をどれほど重要視しているのか。こんな答えが返ってきた。『私は卒業資格を取らなかったことを後悔しています。よく、大学や大学院を中退して、社会に出てビジネスを始めた方が成功者になれるという話を聞きますが、実際にはMBAを取得した人とそうでない人では、履歴書の見栄えや収入が違ってくるのは事実です。特に管理職レベルの役職でしたら、資格を持っている人の方が選考で有利になりますし、できれば資格を取っておくのが良いと思います。』

最後に、小川氏は海外に出て行く若者たちへ熱いメッセージを送る。『これから留学を志している人や現在留学をしている人は、是非その地でしかできないことをして欲しいと思います。学内外で現地人の友達をたくさん作り、日本にはない文化に触れることが留学においてとても大切なことだと思います。勿論、一生懸命勉強することも大事ですが、一日中図書館にこもって教科書に向き合うことなら、留学をしなくてもできることですからね。』

インタビューにお答えいただき、本当にありがとうございました!