AIやブロックチェーンなどの新技術への投資は加速する中、日本も例外ではない。同記事は日本市場で6/1-10に資金調達を実施した日本企業を抜粋、新規性、技術性、収益性、社会貢献性の4視点より、独自の評価基準を元に分析していく。
6/1~6/10の資金調達案件 紹介順
6/1 シナモン AI 9億円
6/1 オプティマインド AI 数億円
6/4 サスメド HealthTech ブロックチェーン 7.2億円
6/5 アジアンブリッジ EC 3億円
6/5 フーモア クラウドソーシング 2.6億円
6/8 ホロライブ VR VTuber ライブ配信サービス 2億円
シナモン
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6/1、9億円(円)
新規性(B) テクノロジー(A) 収益性(A) 社会貢献度(A)
領域:AI
投資家:みずほ銀行、三井住友銀行、FinTechビジネスイノベーション投資事業有限責任組合(SBIインベストメントの運営ファンド)、SBIベンチャー投資促進税制投資事業有限責任組合(SBIインベストメントの運営ファンド)、FFGベンチャー投資事業有限責任組合第1号、伊藤忠テクノソリューションズ、Sony Innovation Fund、TIS
サービス:紙面文書をAIでデータ化する
解決する課題:データ入力の人員コストの削減
参考:https://jp.techcrunch.com/2018/06/01/cinnamon-fundraising/
概要:文書を読み取るAIサービスの「Flax Scanner」の他に、AIチャットボット「Scuro Bot(スクロ・ボット)」、レコメンデーションエンジン「Lapis Engine(ラピス・エンジン)」を製品に持つ。「Flax Scanner」はPDFやWord、手書きの契約書から情報を抽出する 。具体的には、要点を抽出する、請求書の情報を登録する、手書きの文書をデータ化可能。現在は金融・保険業界での利用が多く、特にデータ入力業務におけるニーズが高いという。今後は自然言語処理におけるチャットボットの開発を行なっていく。また、AIエンジニア500名体制で盤石にして行くつもりだ。ベトナムにAI研究所を持つ。
評価 :日本においてまだまだ紙面ベースでの仕事は多い。大手の場合データ入力に毎月1億円のコストがかかっている。ただ、このように古い体質の企業を相手にするビジネスの場合難しい。。伝統を重んじるからというよりも、信用が大事であるからだ。しかし、シナモンはすでに大手金融からの出資を受けているところを見ると、顧客基盤も盤石である。かなり手堅くリターンはあるであろう。気になるとすれば、システムを単品400万円で売り切りモデルなことが気になる。サブスクリプションモデルでシステムのアップデートやトラブル対応までサポートする方が、長期的に見てリターンも大きく、参入障壁も築ける。
オプティマインド
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6/1,数億円(非公開)
新規性(B) テクノロジー(A) 収益性(B) 社会貢献度(A)
領域: AI
投資家:自動運転ソフトウェアを開発するティアフォーと寺田倉庫
サービス:配達車の最適化によるラストワンマイルの配送最適化
解決する課題:同じようなシステムに買い切り型で導入コストが高く、かつアップデートがされない仕様のものも多い。
参考:https://jp.techcrunch.com/2018/06/01/optimind-fundraising/
概要:機械学習や統計の技術を用いて、取得したデータから物流に特化した地図を構築。車幅や走行速度がデータ化されている。そのデータをもとに、独自のアルゴリズムで配送ルートを提示する。実際に、経験の少ない新人配達員の業務時間が大幅に削減された。
評価:名古屋大学の研究をプロダクトに落とし込んでいる。SaaS型。今後、実配送データを収集・解析してGoogleなどがもっていないような『物流に特化した生データの地図』を構築できる。これは強い。将来的にはライドシェアや自動運転が普及した時に、どのように回ればいいのかという部分においては、プラットフォーマーとしての立ち位置を確立できる点も評価できる。
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サスメド
6/4、7.2億円(円)
新規性(A) テクノロジー(A) 収益性(B) 社会貢献度(A)
領域:HealthTech ブロックチェーン
投資家:Beyond Next Ventures、SBIインベストメント、第一生命保険、エムスリー、Sony Innovation Fund、東京センチュリー
サービス:薬ではなくプログラムによる不眠症治療アプリ
解決する課題:日本人の睡眠障害における様々な損失。
参考:https://jp.techcrunch.com/2018/06/04/susmed-fundraising/
概要:患者は医師の処方でアプリをインストールし、アプリ利用料は3割負担の患者で月300円。日々の睡眠時間の記録や、生活の見直しを促すなどコミュニケーションツールとしてつかう。
評価 :アプリでの治療という新たな治療法である。また、日本人の5人中1人に睡眠障害。日本人の睡眠障害における経済的損失は3.5兆円に登ると言われている。睡眠薬の処方量は先進国の中で群を抜いて多く、睡眠薬として用いられるベンゾジアゼピン系薬剤の人口当たりの処方量は米国の約6倍。睡眠障害は多くの疾患を招くことや、生産性の低下を招くことを考えると、この課題の解決のインパクトは大きい。医療費は削減と生産性の向上が見込める。
サスメドの代表の上野太郎は医師であり、長年睡眠について研究してきた。
アジアンブリッジ
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6/5、3億円(円)
新規性(A) テクノロジー(B) 収益性(B) 社会貢献度(B)
領域:越境EC
投資家:ニッセイ・キャピタルと事業会社
サービス:日本製品をアジアで売るEC/在庫管理と会計処理システム
解決する課題:日本企業の海外通販進出のハードル、リスクを下げている
参考:https://jp.techcrunch.com/2018/06/05/asianbridge-fundraising/
概要:提供するサービスは大きく分けて2つ。1つは日本企業が通信販売で海外展開する際の越境EC支援サービズ。台湾をテスト拠点とした事業が軌道に乗り、現在の利用企業は約50社。今後はASEAN各国への事業拡大を目指すという。もう1つはクラウド型の現地法人通販システム「bamb(バンブ)」。bambは在庫管理と会計処理をベースとするシステムで、通販事業を行う国に会社を設立することなく、その国に在庫を置いて通信販売ができる。
評価 :このビジネスの最大の特異点は、越境EC商売における障壁を取り除いているところだ。アジアの通信販売は代金引換が一般的であるが、EMS(国際郵便)を利用した発送では代引きを選択することができない。その課題を現地に倉庫をおいて管理する工程を挟むことで、代引きを可能にしている。また、現地で発信する広告のローカライズや許認可、申請などもアジアンブリッジがサポート。これから盛り上がって行くアジア市場に土地資産と、情報資産を持つことの意義は大きい。ただ、高度経済発展の特徴は文明のジャンプにあり、「代引きが一般的」であるからこそ成り立つストロングポイントからは早く脱するべきである。アマゾンへの売却が固いか。
フーモア
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6/5、2.6億円(円)
新規性(A) テクノロジー(B) 収益性(C) 社会貢献度(B)
領域:クラウドソーシング
投資家:日本政策金融公庫、みらい創造機構、ジュピターテレコム、iSGS インベストメントワークス、一般社団法人 CiP 協議会、DG インキュベーション(既存投資家)、DK Gate(既存投資家)、個人投資家3名
サービス:ゲームイラストやマンガなどのクラウドソーシングプラットフォーム
解決する課題:クリエイターが創る力、それを広げる場所、しっかりと稼げる力、学べる環境をつくる
参考:https://jp.techcrunch.com/2018/06/05/whomore-fundraising/
概要:クラウドソーシングを通じてゲーム向けのイラストやプロモーション用のマンガコンテンツを制作。登録クリエイター数は国内外で6000名以上。制作工程を分業するスキームを活用し、手がけたコンテンツは累計で4000〜5000本。クリエイターのプラットフォームを作ることで創作活動の仕事提供から教育まで支援する。
アニメや映画などの映像化、ゲーム化、商品化などのメディア展開を目的としたコンテンツの原作開発にも力を入れるようだ。最終的に自社IPでマネタイズできる仕組みをつくる。
評価 :twitterなどのSNS上で、絵師と呼ばれる人が、創作活動を発信することで、仕事につなげている現象をよく見る。スキルシェア・クラウドソーシングは近年流行っており、大手IT会社もそのプラットフォーム作りに乗り出している。さてその激戦の中でこのサービスが勝ち得る手段はなにか。おそらくCtoCでつなげるだけでは勝てないであろう。そこで自社IPであるが、これはそこまで簡単ではない。スタジオジブリを例にとるように、ヒットするだけでは十分ではない世界である。そこに革新的スキームを生み出さない限り、勝ち筋はないと思える。
ホロライブ
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6/8、2億円(円)
新規性(A) テクノロジー(A) 収益性(C) 社会貢献度(B)
領域:VR VTuber ライブ配信サービス
投資家:グリーベンチャーズ、オー・エル・エム・ベンチャーズ、みずほキャピタル、個人投資家の千葉功太郎氏
サービス:VTuberに簡単になれる。放送を配信できるプラットフォーム。
解決する課題:Vtuberに簡単になれる
参考:https://jp.techcrunch.com/2018/06/08/cover-series-a-fundraising/
概要:スマホでアプリを使用するだけで、バーチャルキャラクターになれる。また、どうアプリ上で配信もできる。同社では調達した資金をもとに専属VTuberのマネージメント体制の強化、ホロライブの開発強化を進める方針。
評価 :Vtuberは今一番の波の乗りどころであるが同意に戦国時代。ただ同社のサービスのようにスマホで簡単になれるというのはあまりない。サクッと配信できるのメリットがあるため、Youtubeに載せるほどでもない、クオリティーの高いものでない動画のが配信やライブ動画の配信とはかなり相性がいい。Vtuberの登場により、外見を晒すことに抵抗があった層を取り込むことができる。しかし、SHOWROOMもVtuber用のライブ配信場を設けており、正直勝負にならないのではないか。勝ち筋があるとすれば、尖った技術力やメルカリ的一点突破であるが、調達額からしてもあまり見込めないようなイメージである。リード投資家であるグリーベンチャーズの堤達生氏がカバーの社外取締役に就任がどう影響するのか。
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まとめ
今回の調達では億単位の大型なものが多かった。
AIによって確実に人の仕事は効率化されて行くことが実感できる調達案件であった。また、越境ECや、クラウドソーシング、Vtuberプラットフォームなど、世の中はますます価値あるものが容易に交換できる社会になって行く傾向がよみとれる。
そんな時代に求められるのは、「ホンモノ」であるということを実感させられる。
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世界の小川。早稲田大学大学院 機械工学系。世界市場の動向をウォッチするのが趣味。特技はチャリ爆走。