7社が55億円以上を調達!【VR】2018年5月 アメリカ国内の資金調達状況まとめ

7社が55億円以上を調達!【VR】2018年5月 アメリカ国内の資金調達状況まとめ

近年、Virtual Realityという言葉はゲーム産業を中心にさまざまな分野で多く聞かれるようになった。この技術は、世界各国で開発や研究、各分野への導入が進められているのである。

今月からVRと関連技術・事業に携わる企業の資金調達状況をまとめていく。今回は、2018年5月の米国VR関連企業の資金調達状況について分析を行った。

 

5/1~5/31の資金調達案件 日付順

 

5/2    Matterport社(非公開)

5/3    Loom.ai社($3,000,000)

5/16    PlusOne社($1,500,000)

5/17    DoubleMe社($3,000,000)、DigiLens Inc.社($25,000,000)

5/25    Meow Wolf社($17,500,000)

5/30    Decadent社(非公開)

 

 value 2

米国VR-5月資金調達グラフ

Matterport

 

5月2日、非公開

新規性(C) テクノロジー(A) 収益性(B) 社会貢献度(C)

領域: VR

投資家: State Auto Labs Fund

サービス: 3D技術を用いた撮影テクノロジーの提供、データの収集・分析のサポート

解決する課題: 不動産物件や旅行施設、建設プロジェクトなどへのアクセスをよりリアルに。

参考: https://matterport.com (一部英語)

 

概要: 同社は、独自に開発した3Dカメラと、撮影された空間のデータを自動で画像処理するクラウド、そしてこのデータを高解像度のまま簡単に共有するシステムを提供することで、不動産やエンタメ、建築など多種多様な業界で活躍している。

 

評価: 2,600社ものグローバルパートナーを有し、世界80ヶ国にて3Dでの撮影代行サービスを提供していることから、今後世界各国での更なる発展が期待できる。今後AR/VR技術が普及していくにあたってビジネスモデルとして規範になる可能性あり。

 

Loom.ai

 

5月3日、$3,000,000

新規性(C) テクノロジー(A) 収益性(B) 社会貢献度(C)

領域: VR

投資家: Samsung Ventures

サービス: ユーザーによる3Dアバターの作成・共有・配信のサポート

解決する課題: 今後新しく発展していくバーチャル世界でのコミュニケーションを円滑にする。

参考: https://www.loomai.com (英語のみ)

 

概要: 同社はユーザーの顔写真のみを元に顔の3Dモデルを作成し、アニメーションの作成やリアルタイムでの動画配信をサポートするサービスを手がけている。

 

評価: ボディを含む3Dモデルの作成や3Dゲーム・VRサービスへの導入など、技術の展開に関する明確なビジョンは持ち合わせているのは評価できる。しかし、現時点で同社が持つ技術だけでは新規性があまりないため、今後のサービスの新たな展開は開発のペース次第と言わざるをえない。ただし、VR技術を用いたエンタメサービスが普及していく中で同社の技術が活躍する可能性は十分にある。

 

PlusOne

 

5月16日、$3,000,000

新規性(C) テクノロジー(A) 収益性(B) 社会貢献度(B)

領域: MR/AR/VR

投資家: DBJ Capital、D4V – Design for Ventures

サービス: ARやAIを用いた新しい学習形態の提供

解決する課題: AIや機械学習の技術を用いて人間のコミュニケーションのより深い理解を目指す。

参考: https://www.linkedin.com/company/plusone-inc?trk=pprofile_company(英語のみ)

 

概要: 同社は米国、日本、中国の3ヶ国で活動しており、多様な人材と共にAR技術とAI技術を合わせたMixed Reality(MR)技術を開発している。AIを用いたホログラムエンジン「Smart Tutor」を中心にコミュニケーションや発表のスキル向上を目指す教育プログラムを提供しており、より楽しく、より効率の良い教育を目指している。

 

評価: まだ発展途中であるAI技術とMR技術を、結果が出るまでに時間のかかるとされる教育分野に持ち込んでいるため、評価には長期的な視野が求められる。ただし、今回の資金調達は本社をVR技術の発展が盛んな日本に置く企業が関わっているため、今後の展開に期待できると言える。

 

DoubleMe

 

5月17日、$3,000,000

新規性(B) テクノロジー(A) 収益性(B) 社会貢献度(C)

領域: VR

投資家: Institute for Information & Communications Technology Promotion

サービス: 2Dの画像・映像を3Dモデルに変換するシステム

解決する課題: 高度な3Dモデルシステムにより、リアルなVR/AR/MR体験を可能にする。

参考: http://www.doubleme.me (英語のみ)

 

概要: 同社は、2Dの画像や映像をリアルタイムで3Dモデル化することで、エンタメ産業や立体物の印刷をサポートする技術を開発している。既にファッション業界での導入を試みており、マイクロソフト社の「Hololens」を用いて3Dモデルによる新たなファッションショーのあり方を提示している。

 

評価: 技術自体に新規性はあまり見られないが、ファッション業界への導入は珍しいと言える。同社の技術のゲームや3Dアニメーションへの導入も目指しており、ビジョンが明確であることは評価できる。

 

DigiLens Inc.

 

5月17日、$25,000,000

新規性(C) テクノロジー(A) 収益性(A) 社会貢献度(B)

領域: AR/VR

投資家: Continental AG

サービス: ARのヘッドセットに最適なディスプレイの提供

解決する課題: ディスプレイの最適化によってARをより身近にする。

参考: https://www.prnewswire.com/news-releases/revolutionizing-head-up-displays–continental-increases-investment-in-digilens-300650041.html (英語のみ)

 

概要: 同社はAR/VR技術に最適な導光板ディスプレイ(waveguide display)や、それを導入したバイク用ヘルメットのヘッドアップディスプレイ(HUD)などの開発を行なっている。

 

評価: 同社は2003年に創立され、長年AR/VR技術の開発に携わっている。今回の資金調達によって同社の株式の18%を自動車部品メーカーであるContinental AG社が持つこととなり、自動車産業におけるAR技術の発展が期待される。また、同社は過去にSony社やPanasonic社などからも資金を調達しており、家電産業やゲーム産業における同社の今後の活躍も十分に期待できる。

 

Meow Wolf

 

5月25日、$17,500,000(借入金融)

新規性(B) テクノロジー(A) 収益性(C) 社会貢献度(C)

領域: AR/VR

投資家: 非公開

サービス: VR技術を用いたエンタメの提供

解決する課題: エンタメの限界を拡張し、どこからでも芸術的な体験を得られるようにする。

参考: https://meowwolf.com (英語のみ)

 

概要: 2008年にサンタ・フェの芸術家たちが集まって創立された同社は、彼らが作る芸術の新たな体験方法としてVR技術を導入している。展示会での導入のみならず、遠距離からでも同展示作品を楽しめるようにVR技術を用いている。

 

評価: 同社はMRデバイスを開発しているMagicLeap社と提携しており、技術開発にも尽力していることからVR技術を用いたエンタメのビジネスモデルとして規範になりうるだろう。しかし、同社はVR技術の開発よりもその応用に力を入れており、ゲーム産業などへの参入のビジョンは見られないため、同社のVR方面での発展には産業や技術開発という点において限界があるという見方もできる。

 

Decadent

 

5月30日、金額非公開

新規性(C) テクノロジー(B) 収益性(C) 社会貢献度(C)

領域: AR/VR

投資家: 非公開

サービス: バーチャルなグッズ・サービスの市場の提供

解決する課題: バーチャルな世界にあるさまざまな物を売買できる場所を用意する。

参考: https://decadent.io (英語のみ)

 

概要: 同社は2018年3月に創立したばかりの会社で、ブロックチェーン(分散型ネットワーク)や機械学習を用いた市場の展開を目指す。

 

評価: CrunchBaseによると同社はVR技術に何らかの形で関係しているらしいが、ホームページも公式ツイッターもまだ同社のサービスについて詳しく述べておらず、また投資家もその金額も非公開となっており、実態がよく見えない。よって現段階では良くも悪くも評価するのが難しい。

 

まとめ

VR技術には、技術面においても導入方法においても多様な側面を抱えている。たとえば、顔認証や映像技術、効率的なデータ処理や利用しやすいユーザーインターフェースの構築など、VR技術1つとっても様々な技術が求められている。VR技術が使われる場面も、今回の記事で紹介したように、コミュニケーションや教育、ファッションや芸術など多岐に渡る。今後のVR技術の発展には、その無限とも言える可能性を見落とさないためにも幅広く分析していくことが重要だと言えるだろう。

 

datavase.io

同分析記事はここまでです。国内外のベンチャー企業に関する評価依頼、調査依頼がございましたら、以下フォームよりお問い合わせください。

お問い合わせ