アメリカの高校はなかなか面白いことをしてくれるなとつくづく思うが、この行事は、日本でやろうとするとかなりの反響を得るのではと考えさせられた。

スティーブジョブスの最終学歴である私の通うシリコンバレーにある公立高校では、火曜日から金曜日までの通常授業スケジュールに、9時半から10時までの30分間、自習の時間というのがある。

生徒は各自質問のある先生のところに宿題について聞きに行ったり、ミーティングをしたり、グループワークがある人は集まって作業したりする貴重な時間だ。

しかし2年に2日間だけ、その自習時間が85分になる日がある。

“Every 15 minutes”

それがこのプログラムの名前である。意味は「15分ごとに」だ。

 

2日間のうちの1日目、日本でいう高校2年と3年の生徒たちは学校の駐車場にあらかじめセットされている事故現場の前に集めさせられる。

その事故現場には、酔っ払ったドライバー、すでに死亡した様子の被害者と、重傷を負った二人の女性が登場する。

もちろん、用意されているのは本物の車である。

これらの登場人物はすべて同校の生徒だ。

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ここまでは交通安全教室などで見れるような光景だろう。

この行事が意味を成してくるのはここからだ。

生徒が集められた駐車場に、通報者と警察の電話音声が入る。

『こちら911です。どうなさいましたか』

「さっき、学校の駐車場から大きな音と悲鳴が聞こえて。。」

 といった具合に始まる。

その通報によってまず警察が到着する。

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到着した警察は、事故現場を多少確認したのちに、救急車と消防車、遺体を運ぶための霊柩車を呼ぶ。

間もなく救急隊員と消防隊員、霊柩車が到着し、けが人の救出に取り掛かる。

警察官はドライバーが酒気を帯びているかのテストをはじめる。

彼らは実際にこの役職に就く人たちであり、生徒や先生が演じているのではない。

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救急隊が車のドアをこじ開け、中で気を失った女子生徒2人を救出して、病院まで連れていくのと同時に、霊柩車が黒いジップ式の遺体バッグに入れられた男子生徒を乗せ現場を去っていく。

その間にドライバーはかなりの飲酒をした上で運転していたということが判明し、実際に手錠をかけられてポリスオフィスへと送られる。

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これでプログラムは終わりではない。

集められた生徒たちは授業へと返されるが、この事故に巻き込まれたドライバーを含む生徒4人は、それぞれ病院と遺体バッグと監獄の中で1日を過ごす。

病院に搬送された2人は治療を受けるが助からず、治療に関わった医者たちは、警察から連絡を受け病院に駆けつけた双方の親に「最善を尽くしたがお子さんは帰らぬ人となった。」と伝える。

棺桶に移される前の準備段階中に死亡したとされる生徒の保護者が駆けつけ、泣き崩れる横で葬式に向けての準備が始まる。

逮捕されたドライバーの生徒は、刑務所へ行き、指紋と証明写真を撮られ、身体検査をしてから、牢屋に入れられる。

 

2日目、今度は体育館に集められて事が始まる。

葬式である。

 

事故で亡くなった計3人の生徒の親や関係者が参列し、先生も皆出席する。

棺桶に入れられた生徒が体育館に運ばれてきて、後には捜査に関わった警察、治療をした医者、葬式屋が列をなす。

彼らと仲の良かった友人が悔やみのスピーチをし、親もそれに続いて言葉を述べる。

校長の話、警察官の話、このプログラムの意味などの説明もされる。

実際に息子を事故で亡くした先生の話も聞く。

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(体育館中央に置かれた棺桶)

ここまでやるのは本校に限った事ではなく、「15分ごとに」というプログラムはアメリカの学校ではなかなか一般的な行事である。

「15分ごとに」の意味は、本プログラムができた当初、アメリカ国内では15分に1人が飲酒運転による交通事故で死亡していたからだという。

ちなみに今ではこのプログラムのおかげで15分から36分に1人に、事故の数は減ってきている。

飲酒運転を防ぐために作られたこのあまりにもリアルなプログラムは、作り物だとわかっていても、感じるものは多くあった。

葬式が始まる前、「実際はみんな生きてるしな」とさえも思っていた私だったが、式が始まってからは終始涙が止まらなかった。


2日間で計170分もの時間を費やすこの行事には、生徒からの様々な意見が尽きないが、私はとても影響力の大きい価値のあるプログラムだと強く思う。

 

プログラムをまとめたビデオ↓

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